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双子の星座 島の北西、城下町へと伸びる道。 その道から、少し外れた岩の影。 一見、何もいないような場所で。 「はぁ……」 少女――双海亜美は、何かから隠れるように身を潜めていた。 ひなたを手にかけた彼女は、ふらふらと、しかしはっきりと歩を進めて、少し離れた場所で身を休めていた。 彼女がこんなところでじっとしていた理由の一つに、とにかく一度体を休めたいという考えがあった。 けれど、彼女が逃げた先……城下町には、おそらく響、琴葉、風花、環がいる。 そんなところに、今進む気にもなれず。道端の岩陰なんていう、中途半端なところを場所に決めていた。 座り込む彼女の周りを、おだやかな風が流れる。 亜美が頭を上げると、空は何も変わらず、雲が流れていた。 おだやかな光景の中、まるで、今が何も変わらない現実なのだと錯覚してしまいそうになる。 けれど、そんな現実逃避は許されない。 それを示すかのように、顔を下ろすと手に握られた武器が視界に入る。 血と、直視し難い"何か"がへばりついた、鶴嘴。 見るたびに嫌悪感を抱き、投げ出したくなるが、そんな事ができるはずもない。 自らの身を守る、唯一の武器。生き残る為に、縋らなくちゃいけない。 そうして亜美は、ただただ、生きるために苦しみ続けている。 「………」 気だるげなまま、端末の電源を入れる。 真っ先に飛び込んできた情報は、今の時刻。 ――12時を、回っていた。既に彼女は、流れた現実を、聞いていた。 「はぁ」 もう何度目かもわからない溜息をついて、電源を落とす。 12人もの仲間が死んだ、という事に何も感じないわけじゃない。 共にからかったり、遊んだり、頑張ったり。 そして、同じステージに立った仲間。大好きだったという気持ちに、嘘はない。 けれど、それでも自分の命と比べれば、どっちが大事かは明らかだ。 まだまだ、生きていたい。もっともっと、楽しい事があるはずだから。 こんなところで、死にたくないから。そんな、当たり前の事を胸に抱く。 (やっぱり、他の皆はそうなんじゃんか) それに、そう思っているのは自分だけではないらしい。 今まで出会った子達が、ほぼ、そういう決意を胸に固めていて、内心不安があった。 こんな事をしているのは、自分だけなんじゃないか、と。 けれど、結局はこの殺し合いは順調に進んでいた。同じ事を思っている子は、少なからずいるのだ。 自分は間違っていないのだ、と。そう言える。 そう、認めざるをえない。ごちゃごちゃとした思考の中で、視線を落とす。 「……いたい」 落ち着いて、体を休めていると、擦り傷がひりひりと痛みだした。 さっきまでずっと、生きる事に夢中に駆け回っていた間には、意識の外に追いやっていた事実。 改めて見ると、中々に痛々しい。 これも、かつての仲間の必死な抵抗のものだと考えると、本当に気が重い。 響、琴葉。風花、環。そして、のり子と昴。 ここで出会った皆は、自分の手で殺したひなた以外はまだ生きている。 彼女達は、この状況をどう思うのだろう。 のり子以外の他全員は、希望に向かって進んでいたのに。 もう、こんなにも仲間がいなくなってしまって、それでも進むのだろうか。 「戻れるわけ、ないじゃん」 吐き捨てるように、呟く。 まだ幼い彼女に、死の実感が完全に理解できているわけではない。 が、既にその手は一人の少女を"そう"してしまったのだ。 他の11人の子達も、あんな風になって、動かなくなってしまって。 そんな中で、希望を感じられるはずも、ない。 もう、戻れないからこそ。 少女は、一人生き残る事を決めたのだ。 「……真美」 そんな事を考えて、ふと口からこぼれたのは、一人の少女の名前だった。 生まれた時から、ずっと一緒だった存在。 けれど、今はそばにいないし、会ったとしても、もう一緒にはいられない。 ここは、そういう場だから。 生き残るなら、彼女の事さえも切り捨てなければいけない。 それは、きっと彼女が人生で初めて味わう、本当の孤独。 「寂しいなぁ……」 まだ13歳の少女には、耐え難い事。 ぎゅっと、自分の体を抱きしめて、震える体を抑える。 彼女が真に堪えていたのは、人を殺す事でも、綺麗事を否定する事でもなく。 生まれて初めて、たった一人で、そんな重圧を背負う事。 内心は、そんな事に対する不安でいっぱいだった。 けれど、そんな思いをどこかへ追いやるかのように、首をぶんぶんと振る。 そんな甘えた考えを抱いたまま、生き残れるとは思っていない。 この地獄のような状況から生還するには、他の皆を殺さなくちゃいけない。 寂しさなんて、気にしてはいられないのだ。 これから、ずっと。彼女は隣にいた人を喪い、一人で歩まなくてはならないのだから。 「……~~~ッ!!」 いてもたってもいられなくなり、立ち上がる。 休憩していた筈なのに、未だ息は荒く、心身ともに穏やかになった様子はない。 余計な事を、考えすぎてしまったようだ。苦々しい表情を浮かべ、頭を抱える。 「あぁもう、しっかりしなきゃだよねぇ……!」 一人愚痴りながら、身を隠していた岩陰から、道を覗きこむ。 誰の姿も、その場所にはいない。 そろそろ動くか、と考えて、その道をどう行くかを考える。 北か、南か。二つに一つ。 北の方には、琴葉と響、風花と環がいた筈だ。 方向から行って、合流している可能性もあるだろう。 彼女達の方針から行って、最悪の状況に陥ったとしても、命まで奪われる事は考えにくい。 だが、もし合流していたとしたら四人なんて人数は明らかに不利だ。出来れば、会うのは避けたい。 対して南は、今のところ昴とのり子がいる。 昴は、あのままのり子に殺されたかと思っていたが、呼ばれなかった事を考えるにそうではないらしい。 運よく、逃げ出せたか。何か別の乱入者でもいたか。どちらにせよ、別々に行動しているだろう。 ただ、のり子は亜美から見ても危険人物である事に変わりなく、こちらも会うのは避けたかった。 結局、どちらに行っても危険を回避する事なんてできやしない。 当たり前といえば、当たり前なのだが。それでも、最善手がどうなのか、考えるのをやめるわけにはいかない。 いつどこでゲームオーバーになるかも分からないデスゲーム。心休まる時はなく、慎重になる。 幼い心も体も疲弊したまま、彼女は岩陰から足を踏み出す。 行く方向は決めても、この先の事は何も分からないまま。 「……亜美、は」 ただ、一つ。言える事がある。 「こんなトコで死ぬつもりなんか、ないかんね……!」 ゆっくりと上げた顔から見えた、その瞳と声は、揺れながらも。 確かな決意の炎が、立ち上がっていた。 【一日目/日中/C-2】 【双海亜美】 [状態]体中に擦り傷、心身共に疲弊 [装備]鶴嘴 [所持品]支給品一式、ランダム支給品(0~1) [思考・行動] 基本:死にたくないから、殺し合いに乗る 1:北か南、どっちかにいく。 2:真美には、会えない。けど…… 3:希望って……なんだろうね? Believe your change 時系列順に読む Follow my heart beat Believe your change 投下順に読む ひなた りんごのうた 双海亜美 空見て笑って ▲上へ戻る
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※料理漫画の料理って本当に実食しているのかトンデモが多いよね※ 翠「今日のお昼はなんですか~♪」 マ「今日は餃子だよ。」 翠「餃子ですか。」 マ「うん。買い物に行ったらさ、『翡翠餃子』なるものの看板があってね。 なんとなく翠星石を思い出して面白そうだったから作ってみた。」 翠「ほうほう、翠星石を。」 マ「後は焼くだけだから先に向こうで仕度して待っててもらえる?」 翠「はーいですぅ。」 翠「・・・だ、そうですよ。」 蒼「へえ。どんな餃子なんだろうね。」 翠「きっと翠星石のようにエレガントでゴージャスでオネストな上にファンタスティックな餃子ですよ。」 蒼「・・・どんな餃子なんだろうね。」 マ「お待たせー。」 マスターが餃子の乗ったお皿を運んできた。 翠「見た目は普通の白い餃子ですね。」 マ「まずは食べてみましょうよ。はいご飯。」 翠「そうですね、いただいてみますよ。」 蒼「ありがとうございます。それじゃあお言葉に甘えていただきます。」 茶碗を受け取った二人が餃子に手をつける。 翠「なるほど、緑色ですね。」 蒼「お野菜がいっぱいで健康的ですね。」 マ「うん。説明文を読んだけど、春菊・小松菜・ほうれん草を豚肉に入れてるんだって。 にんにくは抜いたからお昼に食べても安心だよ。」 翠「ですがこれじゃあ単に変り種ってだけですね。」 マ「とりあえずは看板にあった紹介通りの物を作ってみたんだ。 だけどもっといじれるね。それこそ翠星石のイメージを反映させてさ。」 翠「翠星石のイメージですか?」 マ「そう、いろいろと手を加える余地はあると思うんだ。」 翠「頑張るですよ。よっ、平成のミスター味っ子!!」 マ「へへっ、どうも。でさ、材料はまだあるし、続いちゃうけど今夜も餃子でいいかな?」 翠「翠星石をイメージした奴ですよね?だったら大歓迎ですよ。」 マ「それは良かった。蒼星石は?」 蒼「別に構いませんけど・・・マスター、僕のイメージだったらどんなのですかね?」 マ「え?えーと・・・」 蒼「あ、あはは、そんなに真面目に考えなくてもいいんですけど。」 マ「うーん・・・あ、ブルーレットとか・・・。」 蒼「・・・・・・。」 翠「・・・・・・。」 蒼「ご馳走様でした、お夕飯は翠星石をイメージした餃子で構いませんから。」 蒼星石がそう言い残して食卓を後にした。 翠「このおバカっちょ!」 マ「痛い痛い!」 翠「蒼星石の心の痛みはもっときつかったですよ! なんであの文脈で料理を出して作ってやらなかったんですか!!」 マ「ううっ、だってそうは思ったけど何も思い浮かばなかったんだもん。 それに涼しげで清潔感があるし、あると助かるし・・・。」 翠「ああ、身を削ってまで働くし・・・。」 マ「そうそう。」 翠「それにしたってあんなものに喩えられて喜ぶわきゃねえです。」 マ「思ったけど、黙ってても悪いなあって・・・。」 翠「とにかく蒼星石に謝って来るですっ!!」 マ「蒼星石、ちょっといい?」 蒼「なんですか?さっきの事ならもう気にしてませんよ?」 マ(さっきの事だなんて一言も言ってないのに・・・やっぱりね) 蒼「どうしたんですか?」 マ「さっきはとっさに思い浮かばなかったから変な事を言っちゃったね。」 蒼「やだなあ、本当に気にしてませんよ。」 そう言って蒼星石が笑みを浮かべる。 マ「でさ、今夜の夕食の時に翠星石だけじゃなく蒼星石をイメージした一品も作ろうと思うんだ。」 蒼「翠星石に何か言われてたみたいですけど大丈夫ですよ。 そんなのでへそを曲げるほど子供でもありませんから。」 マ「いや、謝れとは怒鳴られちゃったけどそこまでは言われなかったんだけどね。 だけどやっぱり蒼星石への気持ちみたいなものも整理して形に現したいんだ。 二人とも僕にとっては大事な存在だからね。・・・それでいい?」 蒼「いいも何も・・・じゃあちょっとだけ楽しみにして待ってますね。」 マ「任せてよ!なんてったって平成の味っ子ですから。」 蒼「ふふふ、ついさっき襲名したばっかりじゃないですか。」 マ「ははは、まあ気にしない気にしにない。」 そして夕方。 翠「どうですか?何か手伝える事があれば引き受けますが。」 翠星石が机に突っ伏すマスターに声をかける。 マ「うー・・・駄目だ、大口叩いたのに全然いい考えが浮かばない。」 翠「もう時間がありませんよ。」 マ「だってさ、なんかしっくり来ないんだよね。例えばブルーチーズ。」 翠「あれって青色でしたっけ?」 マ「いや、アオカビってなまえだけど蒼くない。ついでに料理したら意味無い。」 翠「確かにチーズの色は関係無くなっちゃいますよね。」 マ「あとはさっぱりとしたブルーベリーヨーグルトとか。」 翠「そりゃどっちかというと紫色ですね。」 マ「うん。魚偏にブルーで鯖なんてのも考えたけど・・・。」 翠「そりゃ味っ子じゃないミスターですね。」 マ「ああ、もうさっぱり思い浮かばないー!!」 翠「挫けるな、落ち込むな、くよくよするなー、ですぅ!」 翠星石がマスターの首根っこを掴んでブンブン揺する。 マ「ちょっと待って、はなせば分かる。」 翠「放さんです!表には出してませんが蒼星石も期待してるんですよ! ふやけた脳味噌に喝を入れてやるですっ!!」 マ「そりゃ分かってるけどさ・・・あぁっ!!」 突然マスターが叫んだ。 翠「ひぃっ!どうしたですか?あの、やりすぎたなら謝りますから・・・」 マ「今ので閃いた!なんとかなると思う、じゃあちょっと買い物してくる!」 何やら凄い勢いで出かけていった。 翠「・・・行ってらっしゃい、ですぅ。」 そしていよいよ晩御飯。 マ「準備できたよー。」 翠「はーい。」 蒼「今行きます。」 台所からの声に双子が移動する。 何が出てくるのかという楽しみを取っておくために離れた所で待機していたのだ。 マ「じゃあ食べようか。」 蒼「はい、いただきます。」 翠「いただきます、早く食べましょう。」 マ「じゃあまずは翠星石をイメージして作った料理。 お昼も言ったけれど餃子ね。マスター謹製オレ式翡翠餃子。」 言いながら卓上にあった食器の蓋を取った。 翠「おおっ、これは!」 蒼「皮も鮮やかな黄緑色になってる!」 マ「皮を作る時にすりつぶしたアスパラを練り込んでみたんだ。」 蒼「なんかいい香りもしますね。」 マ「アスパラにバターで下味をつけたんだ。たぶん合ってるとは思うんだけど・・・。 あ、味付けの必要は無いかもしれないけど一応お醤油にお酢、ラー油もあるよ。」 蒼「なるほど折衷というやつですね。」 マ「中身の方はあまり変えられなかったけどね。」 翠「して、これが翠星石のイメージだというその心は?」 マ「うん、まず見た感じは芽吹こうとする若々しさというか、元気というか、そんなものを感じさせるように。 で、中身もイメージカラーの緑で健康的なものに統一したけれどニラとかクセの強いものは避けた。」 翠「なんでですか?」 マ「なんだろう・・・なんとなく内面はキツくないというか、優しい感じというか、そんな感じだと思って。」 翠「なるほど。なかなか高評価ってことですよね?」 マ「まあね。いつもいろいろとありがたいよ。」 翠「へへん、感謝しろです。じゃあ蒼星石をイメージした料理というのも出せです。」 マ「はーい。」 マスターが大きなお盆をテーブルの下から出した。 たくさんの瓶と、なにやら金属のカプセルのようなものが載っている。 蒼「これはシェーカーですか?」 マ「そう。ブルーハワイを参考にしたんだ。」 翠「ブルーハワイってあのカキ氷の奴ですよね。」 マ「元はカクテルでさ、レシピの一例を調べたところ バカルディラム40ml、ブルーキュラソー15ml、パイナップルジュース40ml、レモンジュース10ml を混ぜるんだって。今回はバカルディラム151というお酒を使って分量もちょっといじったよ。」 翠「へえーですぅ。」 マ「で、既にこの中にシェイクしたものが入っております。」 シェーカーの中身を二つ並んだグラスに注いだ。 マ「飲んでみて。」 翠「蒼星石、早く飲んでみろです。」 蒼「うん、いただきます。」 蒼星石がこくりと飲む。 マ「・・・どうかな?」 緊張した面持ちでマスターが聞いた。 蒼「美味しいですよ。さっきのお話だともっと甘いかと思いましたが結構あっさりですね。」 マ「そこは蒼星石のイメージを反映させたからね。きりっとした感じでさっぱりとしてくどくない。 変に自己主張する事も無く、どんなものとも一緒になってもちゃんと合う。 だけどそれ自体が単独でもしっかりと堪能出来る。 ・・・味の方はそんな感じの目指したんだ。」 蒼「そんな風に言われるとなんだか照れちゃいますね。」 マ「ついでに言うとその味ならさっきの餃子にもよく合うと思うよ。 やっぱり仲良しさんの二人の料理だものね。」 翠「よーし、翠星石がゴッドマザーになってやるです。 そうですね・・・『可愛さが異常』という意味の『ラピスハワイ』としましょう。」 マ「どこの言語だ、そりゃ。」 翠「ふふ、男が細かい事を気にするなです。さあ餃子が冷めないうちに食べましょう。」 蒼「カクテルもどうぞ。お注ぎしますよ。」 マ「あ、ありがとう。だけどお酒を飲む前に餃子の残りを焼いてくるね。」 蒼「そうですか、危ないですもんね。」 マ「うん、カクテル作る時に味見をしたからそろそろ心配だしね。 気持ちはありがたいけど今は遠慮しておくよ。」 うきうきとしたマスターが台所に消えた。 蒼「なんだかありがたいね。ねえ、マスターをお料理で表すとしたらなんだろうね?」 翠「そうですね、ご飯なんてどうでしょうかね。」 蒼「いいかもね。真っ白であったかくて、食事には欠かせないものだね。」 翠「それに大体のものと合いますしね、特に餃子なんて相性バッチリですよ。」 蒼「・・・カクテルとはあまり合わないね。」 翠「まあ気にするなですよ。単なる言葉遊びみたいなものですから。」 蒼「まあそうだけどさ。」 翠「それにこいつはなかなか美味しいですよ。」 翠星石が自分のグラスにお替りを注ぐ。 蒼「そんなに気に入った?でも飲み過ぎないようにね。」 翠「大丈夫ですよ、ラム酒なんてお菓子にも使う酒ごときで酔っ払うわけねえです。 残り少ないみたいですし、こんなの全部飲んでもへっちゃらですよ。」 蒼「そうじゃなくって、マスターの分が・・・」 蒼星石が止める間も無く翠星石が一気に残りのカクテルを空けた。 蒼「どうしたのさ?マスターの分が無くなっちゃったよ!」 翠「へっへっへ、今から翠星石がさっきのラピスハワイを作るです。」 蒼「翠星石が?」 翠「マスターが戻って来たら翠星石お手製のを飲んでもらいます。」 蒼「大丈夫かなあ。」 翠「平気ですよ、ここにあるのを混ぜて振ればいいんですから。」 蒼「分量は?食べ物で遊ぶのは・・・。」 翠「さっき聞きましたからあとは感覚でやれますよ。」 蒼「結局勘じゃない。」 翠「まあ任せろです。これで翠星石の評価も急上昇させてやるです。」 蒼「ああ、そういう狙いね。ふうん・・・。」 マ「お待たせー、残りの全部焼いちゃったよ。」 マスターが大皿を手に戻ってきたところ、翠星石がテーブルに突っ伏して寝ていた。 マ「あれ、翠星石ったら寝ちゃったの?」 蒼「カクテルを飲んだせいかな。」 マ「お酒に弱いんだ。」 蒼「そうでもないと思うけど、今日はダウンしちゃったみたいだね。」 マ「仕方ないから二人でいただくか。」 蒼「そうだね、注ぐよ。」 マ「ありがとう。」 蒼「味はどう?実はそれ翠星石が寝る前に作ったのなんだけど・・・。」 マ「うーん、ちょっと苦くない?アルコールがきつめのような。」 蒼「やっぱりそう思う?それがずっとネックだったんだよね。」 マ「ずっと?」 蒼「そうなんだ、ずっと。実はさマスターが居なくなった後・・・」 翠「出来ました!」 蒼「待った!味見をしておこう。」 翠「味見?」 蒼「下手なものを飲ませたくは無いだろう?」 翠「まあそうですけど。」 蒼「じゃあ僕が飲んでみる。」 翠「どうぞ。」 蒼星石が注いだカクテルに口をつける。 翠「どうですか?うまいですか?美味しいですか?」 蒼「ふむ、これは・・・却下。」 蒼星石がシェーカーの中身を一気に飲んだ。 翠「ええっ!どこが駄目でしたか?」 蒼「なんというか、苦い。マスターのと違って甘みや香りが弱すぎる。」 翠「ううっ、じゃあ今度はその辺に注意して・・・」 翠星石がシェーカーに手を伸ばす。 蒼「待った。今度は僕が作るよ。」 翠「え?」 蒼「僕も作ってみたいから交代ね。」 翠「ほほう最初からそのつもりで・・・。」 蒼「なんの事だい?」 蒼「出来た!正確な分量は分からないけれど、比率は大体合っているはずだ。」 翠「じゃあ今度は翠星石が味見してみます。」 蒼「え?」 翠「味見も交代ですよ。」 蒼「・・・分かった。」 翠星石が受け取ったシェーカーに口をつけてちびりと飲む、とそのまま一気に流し込む。 翠「ぷはぁ、蒼星石もまだまだですね。これじゃあキツ過ぎてさっきの餃子には合いませんよ。」 蒼「ふうん、アドバイスありがとう。」 翠「まあ、今の蒼星石のイメージならある意味ぴったりの味かもしれませんがね。」 蒼「へえ、そんなに尖ってると・・・君もなかなか言うねえ。」 翠「じゃあ今度こそ翠星石がうまーいカクテルを作っちゃります。」 蒼「・・・どうぞ。」 そして双子の勝負は延々と続いたのだった。 蒼「・・・で、翠星石がそれを作ったところで力尽きちゃったという訳。」 マ「今回のラム酒は度数が強いから教科書通りの比率より減らしたんだよね。」 蒼「あははー、道理で苦いと思った。」 マ「度数75.5度だよ?こんなのをぱかぱか飲んだらそりゃ寝ちゃうわ。 味見しただけの僕だって既に酔ってきてるもの。 うわ、瓶の中身が半分位まで減ってる。こんなに飲んだんだ。」 蒼「マスター、無駄に消費してごめんね。」 マ「いや、それはいいけどさ。翠星石は酔い潰れちゃったみたいだけど大丈夫かな?」 蒼「平気平気。ドールだから時間が経てば治るよ。」 マ「でもなあ、そうは言ってもやっぱ心配だしさ。」 蒼「うーっ、マスターはいつも翠星石の事ばっかりだね。翠星石の方が大事なんだ。」 マ「そんな訳じゃないけどさ。・・・蒼星石なんだか様子が・・・そう言えば、交互に飲んでたんだっけ?」 蒼「そうだよ。」 マ「もしかしなくてもさ、蒼星石も酔ってるね?」 蒼「酔ってないよー。」 マ「蒼星石も休んだら?」 蒼「平気だよ。待っててね、今から僕特製のカクテルを作ってあげるから。」 立って移動しようとしたところで蒼星石がよろけた。 マ「危ない!」 マスターがそれを受け止めた。 マ「ほら。やっぱり酔ってるんだよ。すこし休もう。」 蒼「じゃあ・・・このままこうしていたいな。」 マ「こうして?抱っこしてればいいのかな?」 蒼「うぃー、こんな風に馴れ馴れしくしたら迷惑?」 マ「そんな事ないよ。とっても嬉しいさ。」 マスターが蒼星石を抱え直して腰を下ろす。 蒼「本当?僕も翠星石みたいにしていい?」 マ「翠星石みたいにじゃ無くって蒼星石が好きなようにしてくれていいんだよ。」 蒼「うん、ありがとう。でも嫌だったら言ってね。話し方とかも無礼で不快だったら戻すから。」 マ「気にしないよ。これからもこんな感じで気楽に接してくれていいよ。」 蒼「ふふっ、嬉しいなあ。」 くっついてきた蒼星石をマスターが優しく抱き締める。 頭をそっと撫でてやるとなんだかとろんとした感じになった。 マ(寝ちゃうかな?寝たら二人とも鞄に運んでおくか・・・) 翠「うー、やいやい!お二人さん見せ付けてくれますねえ!!」 蒼「・・・うん?」 その叫びに蒼星石の目も覚めてしまったようだ。 マ「あ、翠星石起きたんだ。もう大丈夫なの?」 翠「大丈夫ですよ!」 マ「無理ならもう寝た方が・・・。」 蒼「そうだよ、先に寝てなよ。」 翠「大丈夫と言ってます!そうやって二人きりになろうという魂胆ですか!?」 マ「いや、違うけど・・・。」 翠「騙そうったってそうはいかんです!」 マ「誤解だってば。」 蒼「流石は・・・僕の双子の姉。やるね。」 マ「ええっ!?」 翠「ふふん、まるっとお見通しですよ。」 何やら二人の間に険悪なムードが漂う。 マ「あ、そうだ。冷めないうちに餃子を食べましょう。ねっ?けってーい!!」 蒼「そうだね。」 翠「翠星石の餃子ですね。」 蒼「そうだね。」 翠「ご飯だから早く膝から降りろです。」 蒼「分かったよ。」 しぶしぶといった感じで蒼星石が従った。 そのままマスターの隣に腰を下ろしたところ、翠星石が反対側に座った。 二人に挟まれたマスターはなにやら窮屈そうだ。 マ「あ、あのさあ、仲良く食べようねー。」 翠「大丈夫ですよ。」 蒼「うん。マスターは心配しないで。」 マ(ひょっとして、二人も酒乱なんだろうか・・・なおの事しっかりしなくちゃだ) 三人揃って食事を再開する。 微妙に気まずくなった空気を打開しようとマスターが話を振った。 マ「えーと、味付けは変わってないけどさ、どう?あ、ご飯も食べたければお替りできるよ?」 蒼「美味しいよ、こんなものをいただけるなんて幸せだよマスター。」 マ「そう?照れちゃうなあ。」 蒼「本当だよ、マスターももっと食べてよ。」 翠「そういやあんま食べてませんね。ほれあーんしろです。」 マ「いやいいよ。」 翠「遠慮するなです、契約まで交わした仲じゃないですか。」 なんだか目が据わって有無を言わせぬ雰囲気が漂っている。 マ「・・・じゃあ。あーん。」 翠「うまいですよね?」 マ「まあまあかな。」 翠「え、まあまあって、すっごく美味しかったですよ。 まさか・・・翠星石が食べさせたせいでまずくなったと言うのですか!」 マ「いや、そうじゃなくって自分の作ったやつだから・・・翠星石のおかげでとっても美味しいよ!!」 翠「へへー、そうですかぁ?遠慮せずに言えばいくらでも食べさせちゃいますよ♪」 早くも次の餃子を箸で掴んでいる。 蒼「まあまあ、今度は僕が・・・」 翠「駄目ですよ。これは翠星石のために作ってもらった料理ですから。 食べさせられるのは翠星石だけです。」 蒼「へえ、そんな事を言うんだ。」 翠「まあ自分で食べる分には構いませんからガンガンどうぞ。」 蒼「それは寛大だね。・・・だったら、このカクテルは僕が飲ませるよ?」 マ「え、それキツイ・・・」 蒼「僕からのは嫌なの?やっぱり翠星石の方が・・・」 マ「よーし、一気に飲んじゃうぞー!!」 差し出したグラスに注いでもらうと宣言通りに一気に乾した。 蒼「大丈夫?」 マ「美味しかったよ。蒼星石が注いでくれたと思えばアルコールも全然平気だったしね。」 蒼「ふふっ、そう?」 翠「よーし今度は翠星石が注ぐ番ですよ!」 蒼「おや、さっきと言ってる事が違うんじゃないかな?」 翠「この中身のカクテルを作ったのは翠星石です!だから翠星石にも権利があります。」 蒼「くっ・・・さっさと空けておくべきだったか。」 マ「その量を・・・全て飲めと。」 翠「蒼星石のは飲めても翠星石のは飲めないと言うんですかぁ!?」 マ「なんか・・・無限ループの予感が・・・。」 蒼「飲んで・・・くれないの?僕のイメージのカクテルじゃそんなものか・・・。」 マ「分かったから、飲むよ!ぜひ飲みたい!ちょうだい!!」 蒼「良かった・・・。」 翠「じゃあ注いじゃいますよ。」 マ「やっと・・・空いたぁ・・・。」 蒼「じゃあ今度は僕がシェーカーを使う番だったね。」 マ「追加!?なんだかもういっぱいいっぱいなんだけど。 ちょっとは休ませてよ。こんなへべれけじゃもう立つのすら出来なそうだよ。」 翠「そうですね・・・ふふん、閃きました。そんなもの無くともカクテルは作れます。」 翠星石が置いてある瓶を手にして次から次へと口に含む。 翠「ハフヘフふふっへひゃっははら、はやふのめれふ。」 自分の口を指差してマスターへ向かってそう言った。 マ「いや、それは流石に。」 マスターが首を横に振る。 翠「はひいっへるはわはりはへんふぁ?」 マ「分かるけど、いろいろとどうかと思う。」 翠「ひゃあじふりょふほうひれふ!!」 マ「待て!」 マスターがうまく力の入らない状態で逃げようとしたところを背後からがっしりと羽交い絞めにされた。 マ「いつの間に!そして何故!?」 蒼「翠星石、やはりここは協力しようか。」 翠「ほんふぉれふふぁ?」 蒼「ああ。ただしそのアイディアも共有して、終ったら交代だからね。」 翠「オーフェイれふ。」 蒼「じゃあこれで交渉成立と。」 マ「はーなーせー!!」 蒼「早くするんだ翠星石。大分酔いも回ってるみたいだけどまだまだ手強い。駄目押ししてくれ!」 翠「ラヒャー!!」 マ「待てー!しかもそれ、ラム酒が多いってば!!」 マスターが足をばたつかせて抵抗する。 蒼「ふふっ、そんな事してもアルコールが回るのが早くなる上に疲れるだけですよ?」 実際、すぐに足の動きは止まった。 翠「よーひ、っふぇふひをほひへはふよ。ははへほふはんふぇひゃりまひょうふぁ。」 蒼「やめておきなよ。正面からじゃ鼻をつまんだ手を払われるのが落ちだ。 それに息が苦しくて口を開けたなんて言い訳出来ない方が面白いしね。」 翠「ほういふほほへふ?」 蒼「翠星石ちょっと待ってて。今マスターに口を開けてもらうから。」 蒼星石が羽交い絞めのままマスターの首筋に舌を這わせた。 その瞬間、マスターの体がビクンと反応する。 蒼「翠星石、チャンスは見逃さないようにね。マスターが喘いだら一気に行くんだよ?」 翠「りょーはいへふ。」 その間も舌は這いずり回り、首筋から耳から至る所を襲う。 マ「・・・ん・・・んー!!」 翠「まるふぇおんはふぉふぉみふぁいれふね。」 蒼「無理しなくてもいいんですよ。だんだんとどうすれば悦んでもらえるのか分かってきちゃいましたよ?」 翠「ふぁんふぁ・・・そうへいへひばっふぁりずるいれふ。」 蒼「いいじゃないか、君には一番乗りを譲ってあげたんだからさ。 それとも今から役割を交換するかい?」 翠「いやふぇふ!!」 蒼「じゃあそこで待ってなよ。」 翠「ふぁーい。」 再び蒼星石がマスターを責め始める。 舌だけでなく、歯や柔らかい唇も駆使して執拗に責め立てる。 マ「・・・ぅ・・・・・・ん・・・。」 蒼「ふふふ、もっともっと我慢してくれていいんですよ?その方が僕は愉しいですから。」 しばらくして我慢の限界を超えたらしい。 マ「・・・ぁっ!!」 マスターの口がだらしなく開く。 そこを逃さずに翠星石が詰め寄った。 翠「んんっ・・・んっ・・・。」 マ「ん、んぐっ・・・。」 蒼「ふふっ、マスターったらなんか可愛いですよ。」 翠「・・・ふー、あごが疲れました。」 蒼「じゃあ翠星石、交代ね。」 ぐったりとしたマスターの体を支えたまま蒼星石が急かす。 翠「はいはい。」 蒼「もう大丈夫だろうけど、一応逃げられないように気を付けてね。」 翠「分かってますよ♪」 マ「あのさ、もうやめよう?じゃないと・・・もう・・・僕も・・・」 蒼「ひゃあたのふよ。」 翠「了解ですぅ。さーて、今度は翠星石の番ですね。 頑張って我慢してくださいね♪」 翠「う・・・ん・・・。」 翠星石が水の流れる音で目を覚ました。 マ「あ、起きた?」 何やらマスターが洗い物をしていた。 もう朝のようだ。 翠「なんだか・・・頭がズキズキするです。」 マ「お酒が空になってたからねえ。誰がどう飲んだかは分からないけど翠星石も結構飲んだんじゃない?」 翠「昨日・・・何があったか覚えてないんですか?」 マ「え・・・僕が何かしでかしちゃったとか?だったら謝るよ。」 翠「いえ別に・・・おや、蒼星石は?」 マ「ああ、寝室。鞄で寝てるよ。」 翠「流石ですね。じゃあちょっくら起こしてきます。」 マ「あ、いや・・・もうすぐ起きるだろうし寝かせておいてあげようよ。」 翠「・・・そうですね。」 蒼「・・・あ、起きなきゃ!痛っ!!」 起き上がろうとしてゴツンと頭をぶつけてしまった。 蒼「うーん、あたた・・・あれ?ここは鞄の中?」 外で寝てしまったと思ったのだが、いつの間にか鞄に入っていた。 蓋を開けてみる。寝室には誰も居ない。 蒼「えーと、昨晩は・・・って、ふ、服がはだけてる!!」 蒼星石は大慌てで身繕いをした。 翠星石が起きてからしばらくして蒼星石も現れた。 蒼「あ、マスターおはよう。寝坊してごめんなさい。」 マ「平気だよ。僕もさっき起きたからね、朝ごはんはもうちょっと待ってて。」 蒼「はい。・・・あの、昨日の事・・・何か失礼な事しなかった?」 マ「・・・別に?そんな事があった記憶は無いけど・・・。」 蒼「そう・・・それなら良かった。」 翠「じゃあ食器の仕度でもしてますか。」 マ「うんお願いね。」 こうして一見いつもと同じように、それまでとはまったく違った生活が始まった。 And that s all・・・? ※※※※この先は楽屋裏的なものなのでそういうので醒める人は見ない方が吉(見なくても困りません)※※※ ※裏設定的なもの:でも真実は読んだ人の数だけあります※ しかも知らない人には意味不明なネタでお送りされてます あのカクテルの名前は何語なの? そう、ペルー用語でラピスハワイ ※ジョジョの奇妙な冒険のシュトロハイムというキャラのセリフが元です ついでに『And that s all・・・?(それでおしまい?)』は伯爵カイン・ゴッドチャイルドという漫画のシリーズより 次回予告の文句でしたがこの話が続くかは知らない ひょっとして蒼星石の口調でシリーズの時系列が大まかに分かるの? 見つけた!蒼星石の3文字(笑) ※ぶっちゃけノリで合うと感じる方にしてるよ ただ過去のエピソードを踏まえる事はあるかも 酔った時の事って覚えてないんじゃないの? なんで?三人とも忘れてないよ ※蒼星石の口調がらみで考えると三人ともそれをお互いになんとなく察してるよ だって三人とも酒乱なの? もちろんマスターも酒乱だよ ※お酒を飲んで迷惑かけるのは完全にNGだね なんで?だって蒼星石の服がはだけてたということはマスターが脱がせたんでしょ? 違うよ。全然違うよ。 でも、翠星石なんでしょ? 全然違うよ。全く関係ないよ。 へー、じゃあ、蒼星石の服がはだけていた理由は何なの? じゃあ、簡単に説明してあげるよ。まず、脱いだのは蒼星石自身です。 お酒を飲んで大暴れしているうちに、三人ともその場で寝てしまったんだ。 そのような状態を、たまたま一番早起きしたマスターが見つけたんだ。 これは不可抗力。誤解されちゃいます。 でもマスターは服を完全には着せられなかったんだ。とりあえず着せられるだけ着せて蒼星石を鞄に入れたんだよ。 大暴れって何をしたの?蒼星石はどこまで脱いだの? ではこんな事を語るのも野暮なのでさらばじゃ! ドロン‘‘パッ 以上マーク・パンサーのガイドラインネタ 酔った勢いで書いてしまったがちょっとこうかいしている
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『双子旅行記』 「楽しみですねぇ」 「うん」 殆んど乗客のいない電車に、双子は揺られていた。車窓からは山や森、といった自然が見える。 事の発端は五日前に遡る。 とくに夏休みの予定もなく、普段通りだらだら過ごす筈だったのだが、翠星石が商店街の福引を行ったところ、見事一等の温泉旅行を引き当てたのだ。 「翠星石ってくじ運良かったんだね」 「なんか人生の運を此処で使いきった気分ですぅ……だからこそ、この一泊二日は楽しむですよ!」 「そうだね」 「(ふふふ…、今日こそ蒼星石とラブラブになって一線を……キャー)」 子供の様にはしゃぎながら、頭の中は欲望渦巻く翠星石と、はしゃぐ翠星石に笑みを溢す蒼星石。そんな二人を乗せて、電車は走り続けていた。 ――――― 「あ、此処だね」 「お、やっと着いたです…か……そ、想像以上に古いですね……」 若干翠星石の顔が引きつった。翠星石の思い描いていたのは、もっと新しい感じのホテルだった。だが、目の前にあるのは古そうな和風の旅館。 「まぁまぁ。とりあえず行ってみよう」 とにかく、二人は足を進める事にした。 玄関に入ると、数人の旅館の人が出迎えてくれた。 「いらっしゃいませ。カップルですか?」 「カッ……そ、そうで…いだっ!?」 「姉妹です」 顔を赤くして頷きそうになった姉に、妹のチョップが下った。頭を抑えて涙を流す姉をスルーし、予約していた事を告げると、二人は部屋へ通された。 「わぁ……広い部屋ですぅ!」 落ち着ける和風の広い部屋。窓から覗く広大な景色。 先程の不満は何処へやら。すっかりお気に召した翠星石は、子供の様にはしゃいでいた。 「あちらが妹さんですか?」 「いえ、あっちが姉です」 「あらあら、すいません。可愛らしいお姉さんですねぇ」 ちょっとした会話をしていると、はしゃいでいた翠星石が勢いよく話し掛けてきた。 「蒼星石!温泉の方行ってみるです!」 「へ?良いけど…」 「では、ご案内致しますね」 ニコニコと微笑む旅館の人に案内され、二人は浴場に向かった。 浴場は大浴場と呼ぶにふさわしく、広い空間だった。 「お風呂場も広いんだね」 「これなら泳ぎ放題ですぅ!」 「駄目だからね」 「わ、分かってますよ…」 とは言うものの、翠星石の表情は残念そうなものだった。そんな翠星石に、蒼星石は溜め息を吐いた。 「と、とにかく、さっそく温泉に入るですぅ!」 「ま、まだ夕方にもなってないのに…」 「人気が少ない方がよろしいのなら、今が丁度良いと思いますよ」 「は、はぁ……」 確かに、周りに人がいてその人達に迷惑をかけるより、人気のない内に入ってしまった方が良いだろう。 「ほれ、早く脱ぐですよ!」 「ちょ…む、無理矢理脱がさないで……ど、どこ触ってるのさ!?」 「ではごゆっくり、うふふふふ~…」 いちゃいちゃする二人に、再びニコニコと笑みを浮かべて、旅館の人は去っていった。 ――――― 「はぁ~……生き返るですぅ~……」 緩みきった表情で、何やら親父臭いを呟いた。 この大浴場で一番大きなお風呂を、翠星石は一人で独占していた。 「翠星石、いくら誰もいないからってはしたないよ」 「ん~?じゃあ露天風呂に行ってくるですぅ~」 「は、話が噛み合ってない……」 人の話を聞かず、翠星石は言った通り露天風呂へ向かった。 「……おぉ、良い景色です…」 目の前に広がる広大な景色を見て、漸く意識がまともになったらしい。 「蒼星石ー、此処良い景色ですよー!」 「本当?」 蒼星石も合流し、二人で露天風呂につかりながら、広大な景色を楽しんでいた。 「……来て良かったですねぇ」 「……そうだね」 しみじみと呟く二人は、暫くそのままだったとか。 ――――― 「……………」 「……まぁ、双子の姉妹ですし…下手に意識しなければ、良いんじゃないですか?」 部屋に戻ると、二人は固まった。詳しく言うと、固まったのは蒼星石の方なのだが。 部屋には、ピッタリくっついて並べられた布団が二つあった。ご丁寧に、近くにはティッシュ箱とゴミ箱が。 机の上には手紙が置いてあり、「いくら若いとはいえ、明日動けるくらいに抑えて下さいね」と書いてあったのは、見なかった事にしておこう。 「……………」 「……………」 「………食堂、行くです?」 「………うん」 二人は見なかった事にして、食堂に向かった。 その後、本当に忘れたかの様に食事を楽しんでいた。横でニコニコしている旅館の人の視線も気にせず。 だが、部屋に戻るとやはりその現状は変わらなかった。 「……あの人、絶対誤解してるよ……」 「いや、間違ってはないと思いますけど」 「……………」 再び無言になり、少し視線をずらした。 一瞬だが、翠星石には見えた。真っ赤な顔が。 「と、とりあえず寝よう……」 「…そうですね」 ティッシュとゴミ箱と手紙は忘れて、布団に潜り込む。夏休みとは言え、夜は冷えていた。 布団に潜りながら、チラ、と蒼星石の方を見るが、反対方向を向いて寝ていた。 「(…やっぱり、一線を越えるのは無理がありますかねぇ……)」 意気込んで来たものの、蒼星石がそれを嫌がるなら無理強いは出来ない。急ぐ事はないのだが、やっぱり気分は落ち込んでいた。 「……ん?」 ふと、違和感に気付いた。自分の布団に自分以外の温もりを感じたのだ。 「……ふふ、」 優しい笑みを浮かべ、その温もりを抱き締めた。 「おやすみなさい、です」 「…おやすみ」 end
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フタゴノモウジュウ アミ&マミ【登録タグ ID IM バニラ 下田麻美】 autolink IM/S07-015 カード名:双子の猛獣 亜美&真美 カテゴリ:キャラクター 色:黄 レベル:0 コスト:0 トリガー:0 パワー:3000 ソウル:1 特徴:《音楽》?・《双子》? 亜美です、真美です、亜美真美で~っす! レアリティ:C illust.- 普通の0/0バニラ。 特徴《双子》が付いているため、制御不能!? 亜美&真美の効果対象である。 同タイトルでは《音楽》以外の特徴はあまりシナジーがない為、 決め手になる効果の対象になれる《双子》である事はポイントが高い。 そういった意味では他の0/0バニラと比べ出番は多い。 そうでなくとも、同タイトルの黄色レベル0は癖が強い為、 安定感を求める場合にもお呼びがかかるだろう。 ・関連ページ 「&」?
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小泉 幽(こいずみ ゆう) 私、もし死んでも幽霊になりたい! ねぇキュゥべえ、私がいつでも幽体離脱できるようにして! 魔法少女化した時以外、ソウルジェムが現れない魔法少女。 自身の魂(ソウルジェム)が普段は宝石化しておらず、自身の魂を身体から抜き出してゴースト化することができる。 偵察・防御面ではぶっちゃけチート。魔法少女化している時にソウルジェムを狙われても、変身を解いて幽霊化することで生き延びることが可能。 武器は爆発および衝撃。物理攻撃は本来の肉体レベルでしかできず、普通の魔法少女が肉体や武器にエンチャントするのに対しユウは霊的・概念的な強化しかできない。 しかし肉体が失われたらどうしようもない。幸い、自らの意思で幽霊化した時は肉体は目覚めない睡眠をとるので、最近は幽霊姿でパトロール&魔女退治している。 グリーフシードには触れない状態なので霊体のまま浄化、朝起きたら昨日のグリーフシードを回収するのが毎日の日課になっている。 魔女 電波の魔女
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9 :双子誕生日ネタ 1:2008/06/10(火) 18 03 20 ID ???0 相手は蠍。甘い感じにしました。 俺は、無料のスポーツニュースサイトに今日3回目のアクセスをした。さっきと 同じ新着ニュースのスクロールを見ながらも、意識はまったく別のところにあっ た。 時計は午後10時25分。 寝返りをうってベッドから起き上がると、ペットボトルの水を少しだけ口にする。 22時間ほど前に起こったことを何度も思い出してはジタバタしていたからか、 それとも今日これからのスケジュールを意識しているからか、俺の神経はたかぶっている。 一息ついて冷静になろうとしたが、俺はまたあの場面を思い出して自然と顔がほころんだ。 昨日、大学の友達5人で飲みにいった帰り、俺は蠍と一緒に駅から歩いてきた。 あいつも俺も少しばかり酔ってはいたけれど、ハメをはずすほどではなく、ちょ っといつもよりテンションが高いくらいだった。俺はいつものように、蠍に話し かけた。 「なぁ蠍。俺さ、明日…っつーか、あと2分くらいで誕生日。お祝いして」 「おめでとう」 「お前冷たい。もっと愛を込めてさぁ。お前の誕生日はちゃんとパーティーした じゃん」 「お前が家に押し掛けてきただけだろ」 去年の蠍の誕生日、俺は人気パティシエの新作ケーキを持って、蠍の部屋に行っ た。「押し掛けた」なんて蠍は言ったけど、蠍の部屋に着く30分前に電話でアポ を取っていたんだから、あれはれっきとしたパーティーだと、俺は主張した。 「あ、0時ジャスト。これで正式に俺の誕生日~。な、ちゃんと祝ってくれよ」 おどけてそう言いながら蠍を見ると、あいつはいやに真剣な目で俺を見つめた。 不覚にも心臓が跳ねた。 「誕生日おめでとう」 蠍は真顔でそう言うと、視線を落とした。 「…今の、気持ち込もってたっぽいじゃん。蠍ちゃんの愛、感じちゃったかも~ 。そういう色っぽい目で誰でも見つめちゃダメよ?魔性って犯罪なんだから。わ かってる?」 続き
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TL/W37-071 カード名:“双子の姉妹”ナナ カテゴリ:キャラ 色:赤 レベル:2 コスト:1 トリガー:1 ● パワー:2500 ソウル:1 特徴:《宇宙人》?・《動物》? 【自】[手札を2枚控え室に置く] あなたがこのカードの『助太刀』を使った時、あなたはコストを払ってよい。そうしたら、あなたは相手の、レベルが相手のレベルより高いキャラを1枚選び、控え室に置く。 【起】● 助太刀2500 レベル2 [① 手札のこのカードを控え室に置く] (あなたは自分のフロントアタックされているキャラを1枚選び、そのターン中、パワーを+2500) そりゃ双子の姉妹でずーっと一緒にいるワケだしな レアリティ:U 15/09/15 今日のカード
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autolink IM/S07-015 カード名:双子の猛獣 亜美&真美 カテゴリ:キャラクター 色:黄 レベル:0 コスト:0 トリガー:0 パワー:3000 ソウル:1 特徴:《音楽》・《双子》 亜美です、真美です、亜美真美で~っす! 聖櫃の間1/7CVP レアリティ:C illust.- このカードをTCG版wikiで調べる アイマス黄色のレベル0バニラ。 TCG版とは違い、ゲーム版では特徴の《双子》 が活きることはあまりない。
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カーテンの隙間から光りが射しこんできて、絵里はふと目を覚ました。 ベッドの上でグッと伸びをしたあと、時計を確認する。まだダンスレッスンまでの時間はあるので二度寝しようかと考える。 温もりを求めて毛布を被ろうとし、やはり期待をこめて鏡を見つめる。 だが、相変わらず向こう側にいるのは、寝ぼけて目がまだ開ききっていない生田衣梨奈そのものだった。 こうやって期待と落胆を繰り返す朝をあとどれくらい迎えれば、絵里と衣梨奈は戻れるのだろうかとぼんやり思った。 絵里は朝から溜息をつきそうになり、来客用の布団で眠る衣梨奈を見る。 本当に彼女はよく眠っている。昨日も考えたのだが、それは万年寝不足という絵里の体のせいなのだろうか? 確かに衣梨奈の体に入ってからというもの、夜寝る時間と朝起きる時間は早くなっている。 精神よりも肉体の方に感覚は引っ張られていくものなのかもしれない。 となると、いつかは肉体の方に精神もどうかしてしまうのではないかと心配になるが、いまそれを悩んでも仕方がない。 ―戻る方法……あるよね… 確証も保証もなかった。 だから絵里は、ただ必死に信じるしかなかった。 ただ安らかに眠る衣梨奈を守れるのは、事実を知っている自分しかいないのだから。 そこまで思考を進めたとき、不意にやって来た眠気に耐え切れず、絵里は瞼を閉じた。 「ごめんなさいね、衣梨奈がベッド独占しちゃって」 朝食を摂りながら、衣梨奈の母親は衣梨奈、見た目は絵里である衣梨奈に対してそう言った。 「あ…あーだいじょうぶっちゃん。よく眠れたけん」 母親に聞かれた言葉に、衣梨奈は素直に返した。 その口調はいつも以上に柔らかくて舌っ足らずではあったが、衣梨奈の口をついた博多弁に絵里はドキッとした。 「あら、亀井さんも九州出身やと?」 ほらきた。母親の言葉に安心感を覚えたせいで、衣梨奈は思わず博多弁を喋ってしまった。 本物の絵里は生まれも育ちも東京。九州なんて縁が薄いのにどう切り返すか衣梨奈は焦った。 「か、亀井さん、衣梨奈と一緒に喋っとぉうちに、博多弁がうつってしまったっちゃん?」 絵里は慣れない博多弁を使って助け舟を出し、衣梨奈もそれに乗った。 「そーなんですよー。えりぽんの博多弁が心地良かったのでつい…」 「あらそうやと。なんか嬉しいっちゃねぇ」 そうして衣梨奈の母親は微笑みながら、野菜ジュースを飲み干す。 絵里と衣梨奈は視線を交差させ、ふうと息を吐いた。 「すみませんでした。さっき」 「あーだいじょうぶだよ。えりぽんもお母さんと話せて安心しちゃったんでしょ?」 「…はい」 ふたりは揃って生田家を後にした。 絵里はそのまま仕事場へ、衣梨奈はいちど亀井家に戻ることになった。 今日は絵里の両親が自宅に帰る日であり、話を合わせることに苦労しそうだが、避けては通れない道だった。 「だいじょうぶだよ。うちの両親アホだから」 「そんなことないと思いますけど」 絵里なりに緊張をほぐしてくれていることは衣梨奈にも分かったが、今朝の失敗からか、どうしても笑顔にはなれなかった。 見知らぬ大人に敬語を使わずに話すことなど出来るのだろうか。 相手は23年間も絵里を見続けてきた絵里の両親である。終日時間を過ごす中で、ボロが出ない訳はなかった。 「いざとなったら、絵里のアホキャラで通せばなんとかなるって」 絵里はそうして笑い、衣梨奈の頭を撫でた。 いまの衣梨奈の外見は亀井絵里であるが、この表情は、モーニング娘。に加入した当時の顔に似ているなと思った。 不安とか心配とか恐怖とか、そういう負の感情に押しつぶされそうになっている自信のない、亀井絵里。 私、どうやってあの頃から成長したんだっけ?と衣梨奈は思いながらも、強く衣梨奈の頭を撫でた。 「じゃあ、仕事終わったらまた連絡するから」 最寄駅に着いた絵里がそう言うと、衣梨奈は「はい。行ってらっしゃい」と手を振った。 その表情はまだ暗く、瞳も揺れていたけれど、これ以上は時間的にも余裕がなく、後ろ髪を引かれながらも絵里は駅の階段を上った。 元に戻る方法もさることながら、入れ替わったメカニズムの解明も必要だと絵里は考えた。 そもそも、人間の魂、あるいは精神が入れ替わることなんてあり得るのだろうか。 「幽体離脱」という言葉を聞いたことがある。 寝ているときや臨死体験で、自分の魂のみが肉体から離れ、自分の肉体を俯瞰的に見る事が出来るという話だ。 それが実際に実現可能かどうかは別として、そのメカニズムでいくと、今回の件も一応の納得はできそうだ。 だがそこで絵里は、いや、と思考を止める。 幽体離脱で魂が肉体から離れたとしても、それが別の肉体に定着することは可能なのだろうか? 今回の場合、絵里と衣梨奈は階段から落ちたことによって、強い衝撃を受け、一瞬臨死状態に陥った。その際、魂が肉体から飛び出た。 うん、此処まではなんとなく分かる。 だが、それで魂が互いの体に入り、そのまま目を覚ますということは可能なのか? もともと別の“容れ物”であるのに、そう簡単に違う魂と肉体は接着できるのか? この考えでいくと、絵里も衣梨奈も、お互いの肉体があっさりとお互いの魂を受け入れたということになる。 それこそ「拒絶反応」のようなものは起きそうなものだが…と考える。 臨死状態や幽体離脱の場合、自分の肉体を俯瞰的に見るというケースが多いが、今回はそうではない。 そうなると、階段から落ちた衝撃で、互いの魂がなんらかの理由で混在し、容れ物を間違えたということになる。 普通、そう簡単に混在し、入れ替わったりするものだろうか。 この仮説が正しければ、世界中で入れ替わり現象が起きそうなものだが…… 「絵里頭良くないんだって……」 中学生の頃にモーニング娘。に加入し、授業中はほぼ寝ていた絵里は勉強は得意ではない。 集中力の欠如に定評のある絵里にとって、こんな無理難題をよくも20分も考えられたものだと逆に褒めてやりたくなった。 絵里の頭は完全に要領をオーバーし、ともすればショートを起こしそうになっていた。 これ以上の思考は今日のダンスレッスンに支障をきたすと判断し、絵里は頭を振って「はぁ」と椅子に横になった。 絵里はダンスレッスンの部屋のすぐ近くにある簡易休憩所に来ていた。 思いの外に乗り換えがうまく行ったせいか、此処に来たとき、レッスン室を覗くと、室内にはまだだれもいなかった。 時間を潰そうと休憩所へと向かい、自販機でオレンジジュースを買ったところで、絵里は元に戻る方法、入れ替わった方法を考え始めていた。 そして20分が経過し、すっかり温くなったオレンジジュースを再び飲んでいる。 「なーんで入れ替わったんだろ…」 そこで絵里はふと気付いた。 いまのいままで、絵里は入れ替わった方法、メカニズムを考えていた。 しかし、絵里と衣梨奈の入れ替わった“理由”を考えたことはなかった。 ふたりが入れ替わった理由、なぜ絵里と衣梨奈だったのか、なぜこのタイミングだったのか。 「たまたま…?」 ふたり揃って階段から落ちた。衝撃を受けた。なんらかの形で魂が抜けた。そして入れ替わった。 絵里が事務所に遊びに行ったのは偶然だった。そしてあの場にさゆみと衣梨奈がいたのも偶然だった。 だがそれが、必然だったとしたら―――? ふたりが階段から落ちたのが偶然だったとしても、なんらかの理由で入れ替わる必要があったとしたら? 絵里と衣梨奈、どちらかの魂がだれかの肉体に入る必要があったとしたら? なんで? どっちが? 両方が? なんのために? 「……バカバカし…」 絵里はすべての考えを呑み込むようにオレンジジュースの缶を傾けた。 入れ替わる理由に必然性があったなんて、それこそ非現実的すぎる。 幽体離脱説を採用するなら、それこそ必然性なんてない。 だが、もし、必然性を採用するなら、入れ替わったのは…… 「……かみさまの力とか?」 あり得ないと頭を振る。 神様の存在を信じる信じないは別にしても、いくらなんでも考えが飛躍しすぎている。 今日はどうも思考の沼に嵌ったようだと、オレンジジュースを飲み干し、席を立った。 そろそろ行かないとレッスンが始まるなと絵里は急いでカバンを持ち、レッスン室へと走った。
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■ネヴァー・ネヴァー・スターアーツ リングダストを由来とする、宇宙から伝わった「星を投げる」不思議な流派です。 天体や惑星と深いつながりがあり、その原理についてはよくわかっていない点も数多く存在します。 【スターゲイザー】(難) 前提:〈天文学〉敏捷13+ 上限:〈天文学〉 技能なし値:〈天文学〉-10 宇宙から伝わる”声”を受け取り、探索を優位に進める格闘動作です。この格闘動作は習得しているだけで効果があります。〈飛行〉〈軽業〉、医学系技能、〈天文学〉を除く学術系技能、社会系技能、盗賊系技能および〈投石器〉〈格闘〉〈柔道〉〈銃器/種別〉〈準備/種別〉〈再装填〉〈電子機器/保安システム〉〈診断〉〈記録〉〈コンピューター操作〉の技能レベルにこの格闘動作の5分の1(端数切捨)だけボーナスを受けます。加えて各種呪文および〈投石器〉〈原子物理学〉の技能レベルにこの格闘動作のレベルの10分の1(端数切捨)のボーナスを得ます。加えて何か気付くかどうかの知覚の判定、〈嘘発見〉〈心理学〉〈人類学〉〈生態学〉〈犯罪学〉〈鑑識〉〈探索〉〈追跡〉〈診断〉の技能レベル、および感情察知、直感、危険察知などの知力判定にこの格闘動作の6分の1(端数切捨)のボーナスを得ることができます。 能力値が上昇するわけではない点に注意してください。 【スターマイン】(並) 前提:【スターゲイザー】〈原子物理学〉〈投石器〉 上限:〈原子物理学〉 技能なし値: 〈原子物理学〉-5 この格闘動作は、〈準備/投石器〉技能の代用として使うことができます。 この格闘動作の判定に成功すると、スリングまたはスタッフスリングに一瞬で「弾」を込めることができます。 この攻撃の致傷力は、〈原子物理学〉技能レベルを基準とした「振り(スタッフスリングの場合は振り+1)」となります。 この格闘動作の達人(技能レベル20以上)は、「弾」が命中した際のダメージに〈投石器〉技能レベルの4分の1(端数切捨)を追加することができます。さらに、この「弾」による攻撃に対して能動防御に失敗した目標は、敏捷力判定を行い、失敗すると転倒します。 【暗闇戦闘】(難) 前提:〈忍び〉15レベル 上限:〈忍び〉 技能なし値:〈忍び〉―3 [飛猿忍法]にある格闘技能と同じものです。 【軽歩】(難) 前提:〈忍び〉15レベル 上限:〈忍び〉 技能なし値:〈忍び〉-2 [飛猿忍法]にある格闘動作と同じものです。 【グラヴィティフォールド】(難) 前提:【スターゲイザー】〈原子物理学〉〈投石器〉 上限:〈原子物理学〉 技能なし値:〈原子物理学〉-5 この格闘動作は、〈準備/投石器〉技能の代用として使うことができます。 この格闘動作の判定に成功すると、スリングまたはスタッフスリングに一瞬で「弾」を込めることができます。 この攻撃に対して、目標は「止め」「受け」は行えず、「よけ」で別のヘクスに退避することしかできません。受動防御は無効です。 攻撃が命中したら、そのヘクスに強力な重力場が発生します。この影響により、そのヘクス内にいるキャラクターの敏捷力および移動力(行動順や「よけ」にも影響します!)にこの格闘動作のレベルの5分の1(端数切捨)のペナルティを与えます。 目標は自分の行動順で「ふりほどき」を試みることができます。その場合、【グラヴィティフォールド】と目標の体力で即決勝負を行うことになります。開放されるまで、目標は毎ターン〈原子物理学〉技能を致傷力の基準ととした「突き/叩き」の防護点無視ダメージを受けます。 空を飛んでいる目標にこの攻撃が命中したら、即座に落下することになるでしょう。 《無重力》の呪文がかかっている目標に、この攻撃は効果がありません。この格闘動作を使用すると疲労点を2点消費します。 この格闘動作の達人(技能レベル20以上)は、毎ターン与えるダメージに〈原子物理学〉技能レベルの5分の1(端数切捨)のボーナスを受けます。 【フラッシュボム】(難) 前提:【スターゲイザー】〈原子物理学〉〈投石器〉 上限:〈原子物理学〉 技能なし値:〈原子物理学〉-5 この格闘動作は、〈準備/投石器〉技能の代用として使うことができます。 この格闘動作の判定に成功すると、スリングまたはスタッフスリングに一瞬で「弾」を込めることができます。 この「弾」で敵にダメージを与えることはできませんが、相手に命中すると、目標に《閃光》を10ヘクス以内で受けたのと同じ効果を及ぼします。 この攻撃に対して「止め」「受け」はできず、「よけ」のみを行うことができます。この時受動防御は適用されません。 攻撃を受けた目標は、生命力判定を行います。この生命力判定に、この格闘動作のレベルの5分の1(端数切捨)のペナルティを与えます。 この攻撃で、目標の足元のヘクスを狙うこともできますが、その場合「よけ」も行えなくなる代わりに、生命力判定にペナルティが付くことはなくなります。 この格闘動作を使用すると疲労点を2点消費します。 この格闘動作の達人(技能レベル20以上)は、足元を狙っても生命力判定にペナルティを与えることができるようになります。 【プラネット・ウォーカー/種別】(難) 前提:【スターゲイザー】〈惑星学/種別〉《幽体離脱》 上限:〈惑星学〉 技能なし値:〈惑星学〉-5 眠っている間も、幽体となって自由に行動する格闘動作です。 この格闘動作を習得する際は、基準となる〈惑星学〉技能の種別と同じ種別を指定します。その種別に該当する惑星の中でしか、この格闘動作は効果を発揮しません。地球で使用する場合は「〈惑星学/地球型惑星〉」となりますので、概ね「地球型惑星」を選択することになるでしょう。 この格闘動作を習得していると、《幽体離脱》の発動と維持にかかるエネルギーをこの格闘動作のレベルの5分の1(端数切捨)軽減し、この呪文を維持していることによりペナルティを受けなくなります。加えて、《幽体離脱》中、マナが「疎」であることによる呪文の技能レベルへのペナルティがこの格闘動作のレベルの4分の1(端数切捨)軽減されます。 《幽体離脱》中でも他人に話しかけることはできますが、半透明の姿になりますので、他の呪文や【不可視】の格闘動作などで補わなければパニックになる可能性があるでしょう。立ち回りには十分注意が必要です。ただしこの格闘動作の達人(技能レベル20以上)は、触られない限り普通の人間と区別がつかなくなります! さらにマナが「疎」であることによる呪文の技能レベルへのペナルティが格闘動作の技能レベルの5分の1(端数切捨)へと変更されます。 【プラネット・リーダー/種別】(難) 前提:【スターゲイザー】〈惑星学/種別〉 上限:〈惑星学/種別〉 技能なし値:〈惑星学/種別〉-5 惑星の環境を把握して攻撃を回避する格闘動作です。対応する種類の惑星の上でしか効果がありません。 1ターンに【プラネット・リーダー/種別】の技能レベル5分の1(端数切捨)回まで、能動防御に【プラネット・リーダー/種別】の4分の1(端数切捨)をボーナスを得ることができます。 【デュアル・ロード】(難) 前提:【スターマイン】 上限:〈原子物理学〉 技能なし値:〈原子物理学〉-5 投石器に二つの「弾」を込めるこの流派の奥義です。この格闘動作は「スタッフスリング」では使用できません。 この格闘動作は使用を宣言するだけで効果があります。 【スターマイン】【フラッシュボム】【グラヴィティフォールド】の内任意の格闘動作(重複可)を選択し、合計二回判定を行います。 両方成功すれば、二つの「弾」を投石器に込めることができます。失敗すると、準備に余分に2ターンかかってしまいます。 攻撃を行う場合、二つの「弾」は一つの目標にしか投げることができません。命中判定は一度に行いますが、能動防御はそれぞれ別に行います。 この格闘動作を使用すると疲労点を3点消費します。 【不可視】(難) 前提:〈忍び〉16レベル 上限:〈忍び〉+4 技能なし値:〈忍び〉―2 [飛猿忍法]にある格闘動作と同じものです。